日本におけるジェンダー平等の現在
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Current State of Gender Equality in Japan |
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はじめに |
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1994年国連・国際家族年のスローガンは「Building the smallest democracy at the heart of society」
(家族から始まる小さなデモクラシー)であった。
これによって,家族生活におけるすべての事象および個人・家族の日常生活における民主主義・平等と社会における民主主義・平等とが分かちがたく結びついているという認識が深まっている。
日本では1985年の国連女性差別撤廃条約の批准以後,ジェンダー平等に向けた取組みが行われてきているものの,世界各国の積極的な取組に比べ歩みは遅い。
例えば,2010年,世界経済フォーラム(本部,ジュネーブ)のジェンダー・ギャップ指数(GGI;経済的参加と機会,教育達成度,健康と生存,政治的エンパワメントの4つの面の状況を数値化して算出)によれば,日本は134カ国中第94位である。
2009年の国連開発計画(UNDP, United Nations Development Programme)のGEM(ジェンダー・エンパワメント指数,経済的参加と意思決定,政治的参加,経済的資源への意思決定とパワーの3側面から算出)では108か国中第57位である。
このような状況に対し,国連女性の地位委員会も厳しい勧告を行っている。
そこで,日本におけるジェンダー平等の現在を検討し,今後の課題を明らかにする。
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女性差別撤廃委員会(CEDAW)第6次日本報告審議総括所見 |
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2009年8月,女性差別撤廃委員会は日本に対する審議結果,第44会期 第6次日本報告審議総括所見を公表した。
所見は全60項目,このなかで合計48項目,ジェンダー・ステレオタイプ,メディア,暴力,雇用,政治的意思決定,教育,ワーク・ライフ・バランスなど,すべての面にわたって日本のジェンダー平等をめぐる著しい立ち遅れについて懸念を明らかにし,勧告を行っている【表1】。
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【表1】 CEDAW第6次日本報告審議の要約(抄) |
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総括所見番号 |
総括所見タイトル
(関連条項)[ テーマ ] |
総括所見(懸念・勧告) |
15 16 |
前回の所見 |
前回の所見実施が不十分。とくに差別の定義,差別的法規改正,条約の認知度,雇用における女性,賃金格差,意思決定参加。 |
17 18 |
差別的法規・規定(16条)[ 民法改正 ] |
婚姻最低年齢18歳に,再婚禁止期間廃止,夫婦別氏選択制,婚外子差別廃止。 |
19 20 |
条約の法的地位と認知度[ 選択議定書批准 ] |
条約が法的拘束力のある国際文書であるとの認識を政府に促す。国内法への適用を。選択議定書の批准検討を再度勧告。 |
21 22 |
差別の定義(1条) |
改正均等法の間接差別定義は限定的で,条約の完全適用を妨げている。 |
25 26 |
国際本部機構(ナショナル・マシーナリー) |
参画局の権限・機能の明確化を。第3次基本計画では条約を法的枠組みとすること。監視機構が計画進捗の定期的判断を。 |
27 28 |
暫定的特別措置(4条1項) |
とくに女性の雇用,政治的・公的活動,学界も含む全意思決定参加における事実上の平等のため暫定的特別措置をとること。 |
29 30 |
固定的役割分担意識(5条)[ 公人の発言 ] |
女性の人権の認識と促進に対するバックラッシュ,家父長的態度継続に懸念。言葉の暴力を犯罪化し政府公人の暴言防止を。 |
31-38 |
女性に対する暴力
(6条)[ 「慰安婦」問題 ] |
刑法強姦罪への親告罪適用廃止。保護命令を迅速に。弱い立場の女性からの通報促進を。子ども買春,ポルノビデオ・マンガ販売禁止を。「慰安婦」問題の教科書記述削除を懸念。被害者補償,加害者訴追,公衆教育を含む最終解決の緊急な努力を再勧告。 |
39 40 |
人身売買,売買春による搾取(6条) |
経済状況改善による救済,リハビリを。研修生入国監視継続を。女性と子どもの人身取引防止議定書批准を。 |
41 42 |
政治的・公的活動への平等な参加(7条) |
クォータ制,指標,インセンティブ(刺激策)で事実上の平等実現を。 |
43 44 |
教育(10条) |
教育基本法の共学規定削除を懸念。同法にジェンダー平等を取り込むこと。第3次計画では大学女性教員率達成目標20%を同等へ。 |
45 46 |
雇用(11条)[ 雇用区分,賃金格差,同一価値労働同一賃金,非正規雇用,移住女性,所得税法56条 ] |
均等法指針の雇用管理区分が女性差別をもたらす。労働基準法に同一労働同一賃金規定がない。差別企業制裁が企業名公表のみ,裁判期間が長い。残適適特別措置を含む具体的措置をとり,雇用における事実上の男女平等実現を。巨大な賃金格差の縮小を,妊娠・出産による不当解雇防止,官民のセクハラ含む差別の処罰を。 |
47 48 |
家庭と職業生活の調和(11条) |
家事・育児を男女で担い,パートの大半を女性が占めることがないように。子育て施設の提供,男性の育児休暇取得奨励を。 |
49 50 |
健康(12条) |
性教育促進,妊娠中絶を含む情報サービスの提供を。中絶の非犯罪化を。性別データ,精神面の健康状態の情報を。 |
51 52 |
マイノリティ女性 |
アイヌ,部落,在日,沖縄マイノリティ差別をなくす措置を。 |
53 54 |
弱い立場に置かれた女性 |
雇用,健康,教育,社会保障で総合的差別を受けやすい農村女性,シングルマザー,障害者,移民女性など全分野の実態と到達を。 |
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出典: |
堀江ゆり(2010)「女性差別撤廃委員会『総括所見』の内容と今後の課題」,
日本婦人団体連合会編『女性白書2010 女性の貧困―変わる世界と日本の遅れ』ほるぷ出版,pp.18-27. |
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ジェンダー・ステレオタイプ(固定的性別役割意識)とマスメディアの影響 |
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ジェンダー平等を実現しようとする時に,いくつかの重要な課題が存在している。
ここでは,まず,ジェンダー平等に関わる社会意識とマスメディアの影響について考える。
ジェンダー・ステレオタイプ(固定的性別役割意識)とは「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」といった特定のジェンダーが特定の役割を担うことを肯定する意識である。
【図1】は,これに関する国際比較である。
日本では諸外国に比べ,ジェンダー・ステレオタイプが極めて根強いことがわかる。
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【図1】 ジェンダー・ステレオタイプ(固定的性別役割分担意識)(国際比較) |
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出典: |
日本のデータは内閣府「男女共同参画に関する世論調査(2004年(平成16)11月,2009年(平成21)11月)」,その他は「男女共同参画社会に関する国際比較調査(2003年(平成15)6月)」より作成。 |
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国連の女性差別撤廃委員会の勧告は,このような根強いジェンダー・ステレオタイプに強い危惧を表明し,課題を指摘している(要点)。
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家父長制に基づく考え方や日本の家庭・社会における男女の役割と責任に関する深く根付いたジェンダー・ステレオタイプが残っていることは,女性の人権の行使や享受を妨げる恐れがある。
これらが教育に関する女性の伝統的な選択に影響を与え,家庭や家事の不平等な責任分担を助長し,ひいては,労働市場における女性の不利な立場や政治的・公的活動や意思決定過程への女性の低い参画をもたらす。 (下線引用者) |
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ジェンダー・ステレオタイプの存続は,特にメディアや教科書,教材に反映されている。
ジェンダー・ステレオタイプにとらわれた姿勢は,特にメディアに浸透しており,ジェンダー・ステレオタイプに沿った男女の描写が頻繁に行われ,ポルノがメディアでますます浸透している。
過剰な女性の性的描写は,女性を性的対象とみなす既存の固定観念を強化し,少女たちの自尊心を低下させ続けている。 (下線引用者) |
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ここに記されているように,日本社会のジェンダー・ステレオタイプは多様な面におけるジェンダー不平等の原因となり,その結果,日本のジェンダー格差を著しく大きくしている。
また,メディアはジェンダー・ステレオタイプの温存を手助けする一方,女性を性的対象とだけ見なすような社会意識を存続させ強化している。
マスコミにおける女性の割合は,新聞13.8%(従業員のうち),民間放送10.8%(役付従業員のうち),日本放送協会3.5%(管理職・専門職のうち)にすぎない。
(諸橋泰樹(2009)『メディアリテラシーとジェンダー 構成された情報とつくられる性のイメージ』現代書館など)
このこともまた,メディアでの主要な意思決定にジェンダー平等の視点を欠くことにつながっている。
このような事態に対し,女性差別撤廃委員会は次のように勧告している。
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意識啓発及び教育キャンペーンを通して,男女の役割と責任に関するジェンダー・ステレオタイプにとらわれた態度を解消するための努力を一層強化し,積極的かつ持続的な対策を取ること |
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マスメディアに,男女それぞれにふさわしいとみなされている役割や任務について社会的な変化を促進させるよう働きかけること |
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あらゆる教育機関のあらゆるレベルの教職,カウンセリングスタッフへの教育及び現職研修を強化すること |
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ジェンダー・ステレオタイプを解消するために,あらゆる教科書及び教材の見直しを速やかに完了させること |
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言葉による暴力の犯罪化を含む対策を取ること |
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メディアや広告におけるわいせつ文書等に立ち向かうための戦略を強化すること |
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自主規制の実施や採用の奨励等を通して,メディアの作品や報道において差別をなくし,女児や女性のポジティブなイメージを促進すること |
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メディア界の経営者やその他の業界関係者の間での啓発を促進するための積極的な措置を取ること |
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さらに,メディア・リテラシーの獲得も,メディアの影響を克服するために必要である。
市民がメディアを社会的文脈でクリティカル(批判的)に分析し評価しメディアにアクセスし,多様な形態でコミュニケーションを創りだす力,およびそのような力の獲得が求められる。
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雇用労働と家族生活
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次に,ジェンダー平等の影響が大きい雇用労働と家族生活についてみると,日本では女性が結婚・出産・育児を経て働き続けることは大変難しい。
出産育児において,身体的・心理的・社会的負担を担うのはもっぱら女性である一方,行政・勤務先・親族・地域などからの支援を得るのが大変難しい社会的意識と構造が存在している。
その典型的な現れが出産・育児期に労働力率が落ち込むM字型カーブである。
結婚退職が従来に比べ減少したものの,出産後退職が増えている。
男女間賃金格差も著しい。
【図2】に示すように,男性の値を1.0としたとき,女性の賃金総額0.366,賃金0.678,就労者率0.712に過ぎない。
これはOECD諸国の中で最低水準である。
これらは,女性の就業意欲を損なわせるとともに,女性を経済的弱者にし,容易に貧困に結びつける要因となっている。
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男性の家事労働への関与が少ないことも大きな特徴である。
6歳未満児のいる夫の育児・家事時間をみると,日本の男性は1時間(うち育児33分)である。
これに対し,米国では3時間13分(うち育児1時間5分),スウェーデンでは3時間21分(うち育児1時間7分)などであり,日本の男性は諸外国の男性の約3分の1で際立って短い。
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家庭における暴力・DV
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家庭における暴力・DVは,ジェンダーの不平等や家族員間の不平等を背景に,激烈な形で現れる家庭・家族問題である。
いずれも,件数が年々増加し,現在では「新しい社会的リスク」群として認識されている。 (宮本太郎(2006)「新しい社会的リスクと人生前半・中盤の社会保障」『NIRA政策研究』19(1))
家庭における暴力・DVは,パートナーや親子など親密な関係にあるものの間で起こる暴力で,生活空間を共有し,制度上や社会的慣習でもカップルや家族と見なされている関係の中で起こる。
なお,日本社会においては一般的に女性に対する暴力をDVとしている場合が多い。
しかし,家庭および社会の中で暴力の対象になるのは,女性だけではなく,子ども,高齢者,障がい者などの弱者である。
女性に対する暴力のうち,配偶者からの暴力では,警察における暴力相談等の対応件数は1992年14,140件から,2009年28,158件と約2倍に上昇している。
配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は1992年度35,943件から,2009年度72,792件と,これも2倍を超えている。
「男女間における暴力に関する調査」も同様の結果を示している(配偶者から暴力を受けた割合,女性33.2%)。
交際相手からの暴力(所謂デートDV)も深刻で,20代30代の女性の約2割で,年々増加している。
このような暴力に対して,女性が被害相談をする割合は決して多くない。
何の相談もしなかった割合は,配偶者からの暴力では53.0%,交際相手からの暴力では34.4%,性暴力被害では62.6%である。
家庭や親密な関係における暴力は表面化しにくいことを深く認識しておかなければならない。
次に,子ども虐待については,2009年度の虐待相談対応件数は44,210件で,児童虐待防止法施行(2000年)前の3.8倍に増加し,極めて深刻である。
2008年の「児童相談所における家庭支援への取組状況調査」(N=8108)によると,子ども虐待の背景には,経済的な困難33.6%,虐待者の心身の状態31.1%,ひとり親家庭26.5%,夫婦間不和18.3%,DV17.1%,不安定な就労16.2%,親族,近隣,友人から孤立13.5%などがある。
(全国児童相談所長会(2009)「児童相談所における家庭支援への取組状況調査」報告書『全児相』87別冊)
子どもに暴力を見せつけることも虐待である。
暴力事件が発生した子どものいる家庭では,約7割で虐待を受ける母親を子どもが目撃し,さらに,その3割が,実際に父親などからの暴力を受けている。
(内閣府「男女間における暴力に関する調査」結果,平成18年4月公表,デートDVの被害を受けないために)
これらのことから,子ども虐待が各種の要因が複合して他の暴力とつながっていることが理解できる。
以上のような家庭における暴力・DVの本質は,パワーとコントロール(力と支配)である。その背景に不平等な社会があるからである。
家庭における暴力・DVをなくすための方策については,国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)がおこなった女性に対する暴力に関する8条にわたる厳しい勧告がその方向性を示している。
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あらゆる暴力を容認しないという意識啓発・予防教育の取組強化 |
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保護命令発令の迅速化 |
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24時間無料ホットラインの開設 |
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女性,子ども,高齢者など,家族への質の高い支援サービスの提供 |
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通報を促すために必要な措置を講じること |
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公務員が関連法規について熟知し,あらゆる形態の暴力に敏感であること |
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被害者とその家族への適切な支援ネットワーク構築と支援の提供 |
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家庭内暴力・DVの発生率・原因・結果に関するデータ収集・調査 |
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被害者の告訴を暴力犯罪の訴追要件としないこと |
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性犯罪を,身体の安全及び尊厳に関する女性の権利の侵害を含む犯罪として定義すること |
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児童ポルノ法を改正し,女性に対する強姦や性暴力を内容とするテレビゲームや漫画の販売を禁止すること |
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教育および政治 | |
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教育は自立した個人が経済的自立や社会的自立を果たすための重要な基盤であることから,ジェンダー平等に関わる重要な指標である。
日本の教育におけるジェンダー平等について見てみると,高等学校等の進学率は96.5%で,男性とほぼ同様であるのに対し,大学(学部)44.2%,大学院6.8%で,特に大学院段階における女性の進学率は男性の半分以下にとどまっている。
日本の女性の高等教育における在学率は54.1%(男性61.5%)で,フィンランド103.7%(84.3%),米国95.9%(68.0%),デンマーク94.1%(66.9%)に比べ,先進国の中ではかなり低い。
教員についてみても,初等中等教育段階の校長・副校長・教頭など管理的立場にある女性の割合は非常に低い。
高等教育段階においては,助手・助教,講師,准教授,教授,学長の順に女性の割合が顕著に減少し,管理的立場にある女性の割合は極めて少ない。
このようなことから,研究者に占める女性の割合は国際的に見ても際立って低く,わずかに13.0%に過ぎない。
東欧,北欧諸国では研究者の約半数を女性が占めているのに対して,日本では8人に1人である。
また,政治的意思決定(政策・方針決定)過程への参加においても女性の関与が少ない。
国会議員(衆議院)における女性の割合は11.3%で,187カ国中第119位である(2009年)。
管理職に占める女性の割合は,国家公務員2007年度2.0%,地方公務員2009年都道府県5.7%,政令指定都市8.6%,市区9.4%,町村8.9%である。司法分野の女性割合は,裁判官16.0%,検察官12.9%,弁護士15.4%である。
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ワーク・ライフ・バランスの促進 | |
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1985年の女性差別撤廃条約の批准を受け,日本国内においてはジェンダー平等を促進するため,雇用機会均等法,男女共同参画基本法などの法や施策を確立し実施してきている。
男女共同参画基本法(1999)は「男女が,社会の対等な構成員として,自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され,もって男女が均等に政治的,経済的,社会的及び文化的利益を享受することができ,かつ,共に責任を担うべき社会」をめざし,策定されている。(男女共同参画社会基本法第2条)
そのために,5つの基本理念,男女の人権の尊重,社会における制度又は慣行についての配慮,政策等の立案及び決定への共同参画,家庭生活における活動と他の活動の両立,国際的協調を掲げている。
【表2】に,同法に基づき策定された2010年の第3次男女共同参画基本計画の15の重点分野等を示している。
今後,「固定的性別役割分担意識を前提とした社会制度や社会構造の変革を目指すとともに,『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)』,『子ども・子育て支援策』,『人権施策』など,政府が一体となって省庁横断的に取り組んでいる関連施策との密接な連携を図る」としている。
(内閣府男女共同参画局(2009)「第3次男女共同参画基本計画(答申) 参考資料」)
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【表2】 第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(概要) |
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第1部 基本的考え方
男女共同参画社会基本法施行後10年間の反省
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根強いジェンダーステレオタイプ |
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不十分な意識改革・制度改革 |
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未解決な「M字カーブ問題」,長時間労働 |
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生活困難者の増加 |
特徴
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実効性のあるポジティブ・アクションの推進 |
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男性や子ども,地域における男女共同参画の推進 |
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世帯単位から個人単位の制度・慣行への移行 |
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雇用問題の解決の推進,セーフティネットの構築 |
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国際的な概念や考え方の重視 |
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第2部 重点分野
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★新設分野 |
第1分野 |
政策・方針決定過程への女性の参画の拡大 |
第2分野 |
男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し,意識の改革 |
第3分野 |
男性,子どもにとっての男女共同参画 ★ |
第4分野 |
雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保 |
第5分野 |
男女の仕事と生活の調和 |
第6分野 |
活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画の推進 |
第7分野 |
貧困など生活上の困難に直面する男女への支援 ★ |
第8分野 |
高齢者,障害者,外国人等が安心して暮らせる環境の整備 ★ |
第9分野 |
女性に対するあらゆる暴力の根絶 |
第10分野 |
生涯を通じた女性の健康支援 |
第11分野 |
男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実 |
第12分野 |
科学技術・学術分野における男女共同参画 ★ |
第13分野 |
メディアにおける男女共同参画の推進 |
第14分野 |
地域,防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進 ★ |
第15分野 |
国際規範の尊重と国際社会の「平等・開発・平和」への貢献 |
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第3部 推進体制
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国内本部機構の強化 |
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女子差別撤廃委員会の最終見解等の実施状況についての
監視・影響調査機能等の強化 |
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ここでの重要課題はワーク・ライフ・バランスである。
その実現はジェンダー平等ばかりではなく,政策決定,教育,少子高齢化,コミュニティ形成など多方面の課題と関連している。
(ワーク・ライフ・バランス推進会議(2009)ワーク・ライフ・バランスで次の飛躍のための基礎固めを)
ワーク・ライフ・バランスの実現には,社会的気運の醸成,長時間労働の抑制,公正な処遇を伴う多様な働き方の普及,男性の家事・育児参画の促進,職場環境整備等の推進などが求められる。
また,多様なライフスタイルに対応した子育てや介護の支援,安心して子育てができる社会の実現,「社会全体で子育てを支える」ための保育所待機児童の解消,多様な保育サービスの充実,子育て支援拠点やネットワークの充実,介護支援策の充実等が図られなければならない。
(厚生労働省(2010)『子ども・子育てビジョン』,p.8)
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関連ウェブサイト |
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参考文献 |
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内閣府男女共同参画局(2010) 『2010年版男女共同参画白書』 |
・ |
Lane H. Powell,Dawn Cassidy ed. (2007) Family Life Education: Working with
Families across the Life Span (2nd Edition), Waveland Press, IL. |
・ |
文部科学省(1999) 『学校における性教育の考え方,進み方』ぎょうせい,東京 |
・ |
"人間と性"教育研究協議会編(2006) 『新版 人間と性の教育1~6』大月書店,東京 |
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注: |
本稿は(社)日本家政学会家政教育部会編『家族生活支援の理論と実践』(2011)の拙稿「第5章 家族生活とジェンダー」を元にしている。 |
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(2011年8月2日) |
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2010年4月シャルルドゴール空港
「科学は女性を必要としている」 |
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